東京で言うなら奥野ビル(旧銀座アパートメント)のような存在だろうか? 1920年代に建てられたと言うから、奥野ビルよりもこちらの方が少しだけ古い。100年近くバンコク旧市街の空気を吸い続けて来ただけあって、ファサードを見ただけで思わずほくそ笑んでしまうような趣きのあるアンティークビルだ。建っている通りの名前から付いた名前は「バーン・トローク・トゥアゴーク(Baan Trok Tua Ngork)」。日本語に訳すなら「もやし路地ハウス」といったところだろうか。2026年3月に「Louis Vuitton Hotel Bangkok」というエキシビションが開催されたことで大きな注目を集めた。地上5階建ての古き良きタイのショップハウス型建築で、通り沿いの壁一面にアンティーク窓が並ぶ様子はウェス・アンダーソン映画の世界観を彷彿とさせ、ルイ・ヴィトンならずともこれからここでイベントを開催するブランドやアーティストが続出しそうだ。中華系移民の5世帯住宅として誕生当初は中国から移民してきた大家族の住居として建てられたビルで、5世帯の家族がそれぞれ住居兼仕事場としてここを活用していたのだそうだ。チリペーストの製造・販売を営む家族もいれば、お堅いオフィスとしてここを活用する家族もいたそうで、それぞれの事業が軌道に乗り、ここが手狭になった時点で5世帯とも他所へ転居することとなった。その後、先祖供養の際には定期的にビル最上階で一族が集まったりしていたものの、それ以外には特に用途がなく、バーン・トローク・トゥアゴークは長年放置されたままだった。このままではもったいないということで、この度ビルのリノベーションに着手し、アート・ファッション系のイベント、あるいはカフェやバーなどへの賃貸を行うスペースとして復活した。中央の吹き抜け部分を広く見せるガラスパネルビルに入ってすぐ1階と2階は、アトリウム中央に位置する細身の回り階段が印象的。赤絨毯を敷いた階段のふもとには、水場を配した中庭が設えられている。やや重厚な造りの1階から2階へ上がると、次に目に飛び込んでくるのは吹き抜けに面した壁のガラスパネル。もちろん元の建築ではコンクリートやレンガ壁だったところ、ここに透明のパネルをはめ込むことによって、吹き抜け部分が広く見える構造となっている。しかも、ガラスパネルの壁の中に残る扉は元のビルの扉のままという芸の細かさ(ただし、扉の色は緑色に塗り替えられている)。「古いものは古いものとして残し、新しいものは新しいものとして取り入れる」。そんなリノベーション哲学が手に取るようにはっきり伝わるアイデアの一つと言えるだろう。元のまま残るバルコニーライン、そしてシノ・ポルトガル様式のタイル模様上階から吹き抜け部分を見下ろすと、元のまま残されたバルコニーラインの美しさが際立つ。そして、この光景を目にした時に気になるのは床のタイル模様だ。八卦(八角形)の枠内に洋風のコンパスローズが入る柄のタイルは、このビルが建設された当時に流行っていたものなのだろう。シノ・ポルトギース様式(中国・ポルトガル折衷様式)を象徴する模様とも考えられる。この模様は当ビルのロゴマークともなっており、館内の至る場所で見られる。その他の注目ポイントは、中から赤レンガがむき出しになったコンクリート壁。発見できるポイントは決して多くはないが、こんなところにもアンティークビルとしてのキャラクターがよく表れている。4階のカフェ「THE LIVING ROOM」は必見館内常設店の案内もしておきたい。イチオシは4階にあるカフェ「ザ・リビングルーム(THE LIVING ROOM)」。このカフェのデザインに当たり、ビルのオーナーチームとコラボしたのは、ヴィンテージ家具とアートのキュレーション・プラットフォーム「Surround Living」だ。ハイエンドな空間演出を手がける彼らの協力により、バーン・トローク・トゥアゴークのデザイン哲学、価値観、美意識、そして地域コミュニティへの思いなどが店内展示物から感じ取れる仕組みとなっている。注文カウンターの上部をジンジャーブレッド様式の透かし彫りの幕板が取り囲んでいるのもお洒落。陶器などの調度品、額装された設計図、本棚に並ぶ資料などを眺めていると一時間くらいはすぐに経過する場所だ。もちろんスイーツ類やコーヒーも充実している。写真は最近バンコクで流行りのココナッツコーヒーと、パンダンクリームのカヌレ。アイスコーヒーは薄張りグラスにハンドカットアイスを使用し、まるでカクテルをいただいているかのようだった。4階カフェの対面には緑豊かなベランダも!ザ・リビングルームの対面にはオープンエアのグリーン・スペースが設けられている。周囲に高層ビルがあまりないバンコク旧市街では、4階に上がるだけではるか遠くまで見渡せてしまうのが新鮮。天井部分にはガラスパネルの屋根が付いているので、多少の雨なら凌げるスペースだ。カルチャーとアートの香りを存分に堪能した後は、ここで読書でもしながら一息つくのがおススメ。なお、当ビルの5階は管理オフィスになっているので、一般客が立ち入れるのはこの4階までとなっている。見どころは十分あるスポットなので、古建築好きな方にはぜひ一度訪問してみていただきたい。バーン・トローク・トゥアゴーク(Baan Trok Tua Ngork)306 Thanon Santiphap, Pom Prap, Pom Prap Sattru Phai, Bangkok 10100最寄り駅は、地下鉄ワット・マンコーン(Wat Mangkon)駅OPEN: 10:00-0:00 Dailyhttps://www.baantrok.com/%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.google.com%2Fmaps%2Fembed%3Fpb%3D!1m18!1m12!1m3!1d3875.605544594989!2d100.50934467455859!3d13.742315197514136!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i1024!2i768!4f13.1!3m3!1m2!1s0x30e299d6773b3f21%253A0x9f3dd80ffb7ca380!2sBaan%2520Trok%2520Tua%2520Ngork!5e0!3m2!1sja!2sth!4v1778030654817!5m2!1sja!2sth%22%20width%3D%22600%22%20height%3D%22450%22%20style%3D%22border%3A0%3B%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20loading%3D%22lazy%22%20referrerpolicy%3D%22no-referrer-when-downgrade%22%3E%3C%2Fiframe%3Eバンコク旧市街特集ページは↑バナーをクリック!