皆さん、“JTC”という言葉をご存じでしょうか? 日本経済新聞2024年1月30日の記事では「最近よく見る『JTC』とは? 古い企業体質、変革を模索」と題して、「(伝統的な日本企業)の頭文字で、上意下達の企業文化や硬直的な組織運営を皮肉る際に使われ」ると解説しています。一方、タイでJTCと言えば、特にバンコク駐妻さんのブログやSNSでは、シーロム通りにあるアジアで最大級規模のJewelry Trade Centerを指すことが多く、主に宝石でのお仕立てが話題になります。タイ駐妻100人インタ② となりの駐妻はキラキラ見える? ~想像と現実とSNS~では、インタビュイー自身が当事者になる前に思っていたことと、当事者になってから見えている姿や感じることに対して伺った結果をお伝えしましたが、実はこんな話もありました。「みんなどこにJTCでお仕立てするお金があるんだろう? 私は夫にいいよと言われても夫が稼いだお金だと思うと気が引けるのに、なんであんなに買えるんだろう?」実際、100人とお話しさせていただく中で、タイのいいところや、タイで関心のあること・してみたいこと等の話題でジュエリートレードセンターのJTCが何度か出てきましたし、素敵なジュエリー/アクセサリーを身につけたインタビュー参加者も結構いらっしゃいました。そこで、私が「それJTCですか?」とお尋ねしてみたら、返ってきたのは以下のような反応でした。「このピアス、ラザダで300バーツです~」(注:ラザダはamazonのようなECサイトで、1バーツは4.5円ほど)「お友達にJTCに連れて行ってもらったので1つくらいと思って端っこでセールになっていたものを買いました。この指輪千バーツくらいだったかな。」「帯同で仕事は辞めましたが、退職金を資産運用に回して、自分のお金もあるので……。」「日本で働いていたときに貯めたお金で買いました。」「来る前も社畜で帰っても社畜なので今しかないと思ってJTCも楽しんでいます!」等という声があったことを件のはてなを持っていた駐妻さんにお伝えしたら、自ら「聞いてみないと分からないものですね。これは『隣の芝生は青い』なのかも」と。なお、この奥様の旦那様の会社の家賃補助額は、インタビューでランダムに伺った中で最高水準でしたし、月々の生活費やご自身で自由に使えるお金も結構余裕がある方でしたが、ご本人はそうと自覚する機会がなかったようでした。周囲から羨望の眼差しを受けうる人でも、他人の華やかに見える部分が目につき、“ある”ことよりも“ない”ことが際立つことがありえるのですね。ご本人がそもそもジュエリーにご興味がある様子でもなかったと思いますが、座標軸が同じと言いますか、駐妻という共通項があることで、自分と他人の違いに目が行ってしまうものなのかもしれません。(なお、参考値として、イタリアのファインジュエラー、ポメラート的なものの人気が高いようですが、本家だと何十万円からとなるものが、JTCでは本物の石を使って凡そ数千円から数万円でその雰囲気を楽しめるようです。)私が伺った範囲では、JTCを楽しむ駐妻さんに関してはお買い物上手だったり、値が張るものでもご自身で出していたりする方が少なくないようでした。前回、タイ駐妻100人インタ③ 駐妻は「無能」? ~今どき駐妻の学歴・職歴~ 「南洋茶話」第7回で見たように今どきは駐妻さんも相当の職歴があり、帯同になるまでは働いて、“二馬力”の形で世帯収入や家計を支え、自分の欲しいものは自分で買っていたケースが大半です。件の駐妻さんもかなりの学歴をお持ちの専門職の方で、自分で稼いでいた人でした。日本に残って働くという選択肢もある中で、諸般考慮の末に帯同して初めて専業主婦(状態)になった人多数。しかし、それだけ働いていたがゆえ、あるいはその分専業主婦について考えたり向き合ったりすることがなかったがゆえ、外で仕事をする方が大変というふうに家事育児スキルを評価できない人も結構いるように感じました。駐妻に対して持っていた当事者になる前のイメージでも「旦那のお金で楽している」というものもありましたし。仮に、JTCや何か目立つ出費の元手が、配偶者がタイに来てからタイ口座に入ったお給料から出ているとしても、それがご夫婦で許容できる範囲で、月々の生活に支障を与えるものでなければ、何も負い目に感じることはないと私は思うのですが、実際には、この点、少なくない駐妻さんが「夫のお金を使うのは……」と躊躇ったり、「稼げないならせめて節約を」と意識したりしている様子でした。(なお、「配偶者の稼ぎを使う」と捉えて戸惑いを覚えるのは、座談会でお話を伺った駐夫さんにも通じて見られたことでした。)しかし、そもそも、例えば離婚に関する民法のルールで婚姻中に夫婦で協力して築いた財産を原則的に1/2ずつに分けるというのがあり、専業主婦の家事や育児の貢献も考慮されます。加えて、多くの場合、名目は企業によりまちまちであっても、配偶者の帯同に対して手当も出ています。これらの制度があることは、やはりそれだけ「家の中のこと」も大変で大事と示しているのではないでしょうか?令和の今、片稼ぎよりも共稼ぎが主流になり、働き方や人生の選択も多様になっている時代だからこそ、性別を問わず、また金銭的対価の有無も問わず、家族の存在自体や家事労働の尊さを改めて認識することや「夫婦」「家族」単位でものごとを考えることは、駐在員及び帯同家族等が、海外で健やかにより良い日々を送るためにも緊要です。日本人にとって暮らしやすいと言われるタイ・バンコクでも、外国であることには変わりはありません。自ずと帯同自体も「ハードシップ」が伴いますので、帯同者にもストレスを緩和したりモティベーションを高めたりするためのお金の使い方があっていいような気がします。とはいえ、インタビューを通じて、一言に「駐在」「駐妻」等と括ってお金の話をするのも難しいと感じるほど、その待遇には差があるということも見えました。住居にしても、最高額とその逆では4倍ほどの開きがあり、お小遣いと言いますか、家族のためでなく自分のために自由にできるお金も月々2万バーツ前後~あまりないといった方まで様々でした。配偶者の帯同に対して出ている手当については、お一人だけ6万バーツほどと具体的な金額が出ましたが、それ以外は「知らない」「分からない」「忘れた」等で把握できませんでした。しかし、日本にいたときと比べて、という問いに対しては、「二馬力から一馬力になったものの、夫のサラリーが日本にいたときの大体倍なので世帯収入的には±0」というところから「駐在のイメージから期待していたほど増えなかった」「夫は日本の時と大して変わっていなくて、自分が仕事を辞めた分、完全にマイナス」等、懐事情も様々なのが2025年現在のタイ駐妻をめぐる現実と言えそうです。タイ駐妻100人インタ・シリーズまとめページは↑バナーをクリック!