近年、日本のフジロック・フェスティバルがロックフェスとしての原点に立ち返り、インディーズロックやオルタナティブロックへの回帰傾向を強めていると言われる。このインディーズロック・リバイバルの兆しがいよいよタイにも訪れたということだろうか? 2025年11月29~30日にバンコク郊外の遊園地サイアム・アメージング・パークで開催された野外音楽フェス「CAT EXPO 12」を鑑賞して、そのような思いを強くした。バンコク、カンナーヤーオ区の遊園地「サイアム・アメージング・パーク」サイアム・アメージング・パークで開かれたCAT EXPO 12の夜の場内バンコクのユースカルチャーを支えてきた、CAT EXPOの歩みCAT EXPOの前身は、かつてバンコクに存在したインディーズ音楽専門ラジオ局「Fat Radio」主催の「Fat Festival」なる音楽フェスに当たる。タイのポップミュージック・シーンがまだ「GMM Grammy」と「RS Music」の二強寡占状態にあった2000年代初頭において、Fat Festivalは多くのインディーズミュージシャンに演奏機会を与えるイベントとして注目され、後にタイのポップカルチャーを牽引するバンドの育成に大きく貢献した。2013年、Fat Radioはタイのメディア環境の変化に対応して地上波ラジオ局としての役目を終え、オンライン音楽放送局「Cat Radio」として新たなスタートを切る。音楽フェスもまたCAT EXPOと名称を変え、2014年11月に第1回目を開催。以降、毎年バンコク郊外の遊園地で開催されるフェスとして地元の若者たちから支持される存在となった。転機となったのは2017年ごろからタイでも顕著になり始めたアイドルポップのブームで、その頃を境にCAT EXPO出演者の中からインディーズバンドの姿が減り始め、徐々にアイドル歌手を主体とするイベントに変わってきた。それは折しもタイの大衆音楽の主流であるタイポップが“T-POP”として本格的にリブランディングされ始めた時期とも重なる。流行のK-POPのビジネスモデルを参考として、ストリーミング時代のマーケティング戦略やアイドルグループのファンダム文化を積極的に採用し、T-POPは産業面でも音楽性の面でも飛躍的な成長を続けてきた。これからのT-POPを担う ALLY JETAIME1日目のメインステージを大いに盛り上げた大スター、JEFF SATURCAT EXPO 12 メインステージの盛り上がりタイ国内でもインディーズロック回帰の流れ今回のCAT EXPO 12においてもメインステージのヘッドライナーを務めるのはほぼT-POPアイドルの面々だった。彼らが大きな集客力を持ち、今なおT-POPという産業の土台を力強く支えていることは間違いない。彼らの活躍によってタイの音楽産業にはより多くの雇用が生まれ、多種多様な音楽経験者が制作者やプロデューサー、スタジオミュージシャンとして音楽に携わり続けられるようなキャリアパスを描きやすくなってきた。そんな流れの中、このたびCAT EXPOに再びインディーズミュージシャンが呼び戻されることになったのは、何か象徴的な出来事のように思える。メインステージではないものの、会場内の入口近く、多くの来場者の目に留まりやすいステージが彼らに用意されていたことに、まず好感を持った。高度なマーケティング手法に支えられたメジャー系アイドルやポップミュージシャンと異なり、世間的な知名度は高くないものの、演奏力が高くライブでの爆発力があるインディーズバンドにはふさわしいステージだったように思う。個人的な実感ではフェス全体の満足度を上げる意味で彼らの復帰は大きな意味を持ち、ライブステージ前の盛り上がりを見ているとファンがこの日を長らく待ち望んでいたことはどうやら間違いなさそうだった。ここ数年、日本でも精力的にライブ活動をしている「YONLAPA」「FORD TRIO」「KIKI」「COMMON PEOPLE LIKE YOU」など活きのいい若手バンドがいるかと思えば、「Desktop Error」「Inspirative」「Faustus」といったタイのポストロック/シューゲイザーの重鎮が呼び戻されたことも実に感慨深かった。彼らの再登場により、ここ数年CAT EXPOから足が遠のいていたであろう古参のコア・ファンも戻って来ていたようで、オーディエンスにも厚みが増した。フジロックがここ数年のインディーズ回帰によって集客を増やしたと言われる中、タイのフェスにも同様の動きが出てきたとも受け取れる。主催者側にそのような意図があったかは分からないが、ここがメインカルチャーのT-POPとサブカルチャーのインディーズロックが融合する貴重な場として発展して行けば、タイの音楽産業の未来はますます明るい。世界的に見てもガレージロック・リバイバルのファッションやサウンドが、TikTokなどを通じてZ世代に「クールなもの」として受け入れられるトレンドもあるようだ。今後数年を見据えたとき、今回のCAT EXPOが意外と大きな節目だったと振り返られるような気がしてならない。メジャーとインディーズ双方の面々がそろい踏みすれば、舞台に立つ役者の数はタイ国内勢だけですでになかなかの充実ぶり。欧米の有名ミュージシャンを呼ばず、数組のアジア勢の客演を招致しただけで、我々のような外国人にとっても大満足のフェス興行が丸二日間にわたって展開されることとなった。今後ますますタイの音楽シーンから目が離せない。FORD TRIOKIKICOMMON PEOPLE LIKE YOUINSPIRATIVEFAUSTUSDESKTOP ERROR%3Ciframe%20data-testid%3D%22embed-iframe%22%20style%3D%22border-radius%3A12px%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fopen.spotify.com%2Fembed%2Fepisode%2F7CopUceWoegdkpW7VKKc9x%3Futm_source%3Dgenerator%22%20width%3D%22100%25%22%20height%3D%22352%22%20frameBorder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20loading%3D%22lazy%22%3E%3C%2Fiframe%3E%3Ciframe%20data-testid%3D%22embed-iframe%22%20style%3D%22border-radius%3A12px%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fopen.spotify.com%2Fembed%2Fepisode%2F1z9QgYCsEJFLOfxthcav7B%3Futm_source%3Dgenerator%22%20width%3D%22100%25%22%20height%3D%22352%22%20frameBorder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20loading%3D%22lazy%22%3E%3C%2Fiframe%3EPodcast番組「ちゃおタイ・ラジオ」より、関連エピソード