シーナカリン鉄道市場(タラート・ナット・ロットファイ)で取材をしていると、多くの店の主人が口をそろえて「絶対、見に行った方がいい」と薦めて来る店がある。それがナイトマーケット内の北端に新設された「Rodszzy」だ。この市場のオーナー、ロッドさんが直営するヴィンテージ・ショップと聞いて期待して足を運んでみて、聞きしに勝るお宝の山に一瞬で心を奪われた。まずはコンクリート打ちっぱなしの屋内スペースに鎮座するフェラーリ308GTSがお出迎えしてくれる。そのボディにピンクのネオン光が反射する様はまるで絵画のような美しさを湛えていた。なぜアメカジやミリタリーの聖地にフェラーリなのか? ――それは、かつてのアメリカ西海岸のセレブリティたちがヴィンテージデニムを履き、この308GTSのルーフを開けてサンセットを駆け抜けた、あの自由な時代の「憧れの象徴」そのものだから。店主の審美眼が服だけにとどまらず、ライフスタイル全体に美学が宿っていることを象徴するかのような眺めだ。バンコクの夜に、突如として現れるイタリアの至宝。Rodszzyの店内に鎮座するのは、1970年代後半から80年代にかけて世界を熱狂させた「フェラーリ308GTS」。ピニンファリーナが描き出したそのフォルムはまさに「動く彫刻」。1940年代のUS NAVYショールカラー、そして絶滅危惧種のM-1937デニムプルオーバー広々とした店内にはヴィンテージTシャツコーナーやデニムパンツのコーナーなど、魅力的なコーナーがいくつか設けられているのだが、とりわけマニア心をくすぐるのはお宝デニムジャケットがズラッと吊り下げられているこのコーナーではないだろうか?ヘチマ襟(ショールカラー)のUS NAVYデニムジャケットの数々は、ヴィンテージ古着にさして興味のない人々ならミリタリーアイテムだと気付かないものだと思う。これらは1940年代(第二次世界大戦期)に米海軍の作業着として支給されていたもので、特徴的な襟とチェンジボタン(取り外し可能なボタン)のディティールにマニアが息を飲むアイテム群だ。そして、さらに年代の古いアイテムがその右側に並ぶデニムプルオーバー「M-1937」。大戦初期まで米陸軍で採用されていた作業着で、被り型のデザインと下部に配置された大きなポケットがアイコンになっている。これらのアイテムは後世の服飾デザインで何度も引用されてきた名品で、レプリカでさえもそこそこの高値が付く品々だ。その本物がズラッと横一列に並ぶとなかなかの迫力を感じる。これだけの美品であれば、日本で買うと一着20~30万円ほどの値となるように思うが、どんなものだろう?そして、写真中段に映っている重厚なディスプレイケースの中に並んでいるのは、ヴィンテージ・スニーカーの王道中の王道、「Made in U.S.A.」時代のコンバース・チャックテイラー。Rodszzyのこのコレクションは、スニーカー・マニアが喉から手が出るほど欲しがる、今や「動く資産」とも言えるレアアイテム揃い。2001年にコンバースのアメリカ工場が閉鎖されたので、ヒールパッチやインソールに「Made in U.S.A.」と刻印された個体はそれだけで希少価値が跳ね上がる。現行品に比べてトゥキャップ(つま先のラバー)が小さく、全体的にシュッとした細身のシルエットが特徴的で、これがヴィンテージ特有の色気を生み出している。細部の美しさはぜひ店頭でご自身の目でご確認いただきたい。ヴィンテージを目で愛でながら、カフェ&バー・スペースでリラックスヴィンテージ古着の博物館の魅力はさらに続く。何と記事冒頭でご紹介したフェラーリの横にシックなカフェ&バーが設けられていて、ここで酒類やコーヒーなどをオーダーすることができるのだ。私のような小心者は「ヴィンテージ古着を汚してしまったらどうしよう?」などと余計な心配の一つもしてしまうのだが、とっておきのカクテルなども用意されているので、時間をかけてじっくりとヴィンテージの名品たちを眺めていたいという方はぜひトライしてみてほしい。この日、私がオーダーしたのはフローラルな魅力のコーヒートニック、その名も「Rodszzy」(150バーツ)。れっきとしたコーヒーメニューだが、カクテルのような妖艶さも備わった味わい深い一杯で、こんなところにも「バンコク・ナイトマーケット・ブームの仕掛人」らしい並みならぬこだわりを感じる。「安さ」ではなく、「繋がり」を求めて来る場所昨今は円安の影響もあり、「タイでのヴィンテージ古着はもう安くない」との日本人の声もよく耳にする。たしかにひと昔前のように安値でお宝アイテムを見つけることはむずかしくなったかもしれない。現在のタイはヴィンテージ古着を安く仕入れる場所と言うよりも、適正価格で多くのお宝を発見できる場所へと変わってきているのだと思う。それはこのレアアイテムにあふれた古着の博物館に足を運んでみれば一目瞭然だ。古着好きの方ならよくご存じのように、現在のバンコクは「世界の古着王」の異名を取るパキスタン人、サリーム・ガンチ氏が拠点を置き、世界の古着集積地としての名声を年々高めている。そして、世界中から集まってきた数多くの古着に触れてきた中で、タイ現地の人々が目利きとしての審美眼を高め、適切なキュレーションの下にこのような古着の博物館を生み出すまでに至った。現地の人々が古着の消費者としての存在感を増してきた中で、ひと昔前よりもその価値が広く正確に浸透しているので、当然ここで売買される価格も上がる。特にシーナカリン鉄道市場はオーナー自らが愛好家としてのこだわりを持っていて、そこに共鳴する人たちが集まってできたような場所でもある。これからのタイでのヴィンテージ古着の買物には「安さ」を求めるのではなく、彼らのような審美眼を持つ人々との「繋がり」を求めて来るのが正解になるのではないだろうか。この店の応接スペースのような場所には日本の雑誌『Lightning』が置かれていた。ここに限らず、これはタイの古着店でよく目にする光景で、どうやらタイの古着愛好家の多くが日本の雑誌文化から古着のディテール知識を学び、価値の体系化を行っているようである。私たちは同じ趣味を持つ友人として、その輪の中に入って行くのが最高の楽しみ方であるように思うのだ。エントランスから視界に飛び込んでくるのは時代も国境も超えた「本物」たちの共演。天井のカヌーに吊るされた1940年代のミリタリーデニムが、90年代のオルタナティブ・ロックTシャツと静かに視線を交わす。この一見カオスな空間を卓越した審美眼で一つの「美学」へと昇華させているのが、Rodszzyの真骨頂。天井から吊るされたのは単なる古着ではなく90年代の文化そのもの。中央の鮮やかなブルーは、Sonic Youthのダーティ・エイリアンのロンT。そして左右を固めるRage Against The MachineやWu-Tang Clanのオリジナル・ピース。かつてハーレーダビッドソンと覇を競い、アメリカン・バイクの黄金時代を築いた「インディアン」。独特のフロントフェンダーのラインとタンクに誇らしげに描かれた横顔のロゴが、当時のクラフトマンシップを今に伝える。注目すべきは背後に控えるハーレーのレーシングジャージとの対比。1920年代にLeeのプロモーション用に誕生した「バディ・リー」。店内の円卓内に整然と並ぶ姿はさながらワークウェアの歴史を司る秘密会議のよう。注目すべきは彼らが纏っているミニチュアのオーバーオールやワークシャツ。当時の生地をそのまま縮小したかのような精巧な作りはヴィンテージ・デニム・ファンにとって究極のコレクターズアイテム。250ccクラス最速の伝説、60年代の公道を制したDUCATI 250 Mach 1。特徴的な流線形のガソリンタンクと、クロームとレッドのコントラスト。Rodszzyの店内で、背後に並ぶ無垢な白Tシャツの列と対峙するその姿は、半世紀以上の時を経てもなお、剥き出しの「速さへの情熱」を放つ。ロッジー(Rodszzy)1, 51 Soi Srinakarin Nong Bon, Prawet, Bangkok 10250最寄り駅は、MRTイエローライン・ラマ9世公園(Suan Luang Rama 9)駅OPEN: 11:00-20:00 (Tue, Wed), 15:00-23:55 (Thu-Sun) Closed on Monhttps://www.facebook.com/Rodszzy/%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.google.com%2Fmaps%2Fembed%3Fpb%3D!1m18!1m12!1m3!1d1938.2168622012932!2d100.648295141468!3d13.692161049085483!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i1024!2i768!4f13.1!3m3!1m2!1s0x311d5f8465c1a7e5%253A0x4a8667d2df87e75c!2sRodszzy!5e0!3m2!1sja!2sth!4v1769296277586!5m2!1sja!2sth%22%20width%3D%22600%22%20height%3D%22450%22%20style%3D%22border%3A0%3B%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20loading%3D%22lazy%22%20referrerpolicy%3D%22no-referrer-when-downgrade%22%3E%3C%2Fiframe%3Eシーナカリン鉄道市場・完全攻略ガイドのページは↑バナーをクリック!