カオサン通りはすっかり賑やかになりすぎたか、今や一昔前のダラーッとした空気を求める人たちはすぐ近くのサムセン通りのソイの中に紛れ込んでいるそうな。この界隈に足を踏み入れると、一日中特に何もすることなく店の軒先でビールを飲んでいるような人たちが多く目に留まる。かく言う私自身もこの町の風景に溶け込み、誰に叱られることもなく、真昼間から文庫本とにらめっこしつつシンハーをちびちびとやっているのが性に合う。そんな一昔前のバックパッカーの皆様に朗報。サムセン通りソイ4のちょっと入り組んだ横丁に、沈没するのにおあつらえ向きの居酒屋がある。店名は、372 Ramen And Sake。築100年以上の古民家を気に入った若いタイ人オーナー夫妻が、この物件をラーメン居酒屋にリノベーション。こんなに沈没するのにうってつけの好立地に、なんて良心的な居酒屋を建ててくれたんだ? いったい誰のために? もしかして俺? 我々日本人としては、ただただ感謝の気持ちしかない。タイ人って優しいよなぁ。気のせいかもしれないけど……。日本人経営のラーメン店での修業経験ありラーメンも旨いが、何しろつけ麺がいい。豚骨・鶏ガラ・魚介ダシの旨味たっぷりで、日本人も納得の出来栄えだ。タイの人がどうしてこんなにちゃんとしたつけ麺を作れちゃうんだろう? そう思い、店を切り盛りする奥さんに尋ねてみたら、ご主人がかつて日本人経営のラーメン店で修業していたとのことだった。そうと聞けばこちらも居ずまいを正し、本格的に飲むモードに入らねばなるまい。謎の義務感に背中を押され、追加で茄子の揚げびたしを注文することにした。実にいい。店内から見えるバンコクの下町風景は、なぜか日本の昭和の横丁を彷彿とさせる。台車を引きながら通りを行きかう行商の姿を目で追いつつ、真昼間からビールをちびちびやっていると、まるで自分がすでにこの横丁のご隠居にでもなったような気分だ。このまま明日から仕事しなくても良くなったら最高だろうなーなどと、虫のいい妄想まで膨らんで来る。すると、二本目は日本酒か、あるいは品揃えのいいワインにまで手を伸ばしたくもなって来た。本当にいいのか? そんなことが許されるのか? こんなところでPERFECT DAYSごっこなんかしている場合なのか? 心の中の役所広司が青空を見上げ、何か意味ありげに小さくため息をつき、目を細めた。実のところ大した意味なんかなさそうでもある。ちょっと自己陶酔が過ぎたのかもしれない。古民家の魅力は、カフェとしても活用休日、日常を離れ、何もかも忘れてボーッとできる時間、プライスレス――。まるで時の流れが緩やかになったかのようなこの空気は、サムセン通り界隈の下町風景と、古い木造家屋が織りなすもの。しかも、この宝物のような空間は、お酒を飲まない人々にも開かれていた。当店はコーヒーやスイーツにも注力していて、オレンジ抹茶ラテなど、タイらしい魅力に満ちたカフェメニューも充実しているのだ。酒を飲む者も飲まない者も、分け隔てなくリラックスできるノスタルジック空間。たまの休日、心の底から自由な気持ちを味わいたくなったら、短パンにサンダル履きでふらっと立ち寄ってみてほしい。すぐそばに、まだまだハシゴしたくなるような店がたくさん揃っているから。372 Ramen And Sake372 Banphanthom Alley, Ban Phan Thom, Phra Nakhon, Bangkok 10200プラアーティット船着場(Phra Arthit Pier)近くOPEN: 12:00-22:00 (Closed on Mon)https://www.facebook.com/profile.php?id=100093974177402%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.google.com%2Fmaps%2Fembed%3Fpb%3D!1m18!1m12!1m3!1d3235.245137022243!2d100.49771332597861!3d13.763418454886606!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i1024!2i768!4f13.1!3m3!1m2!1s0x30e2994c8c6eb391%253A0x37ce9bb5585c704d!2s372%2520Ramen%2520And%2520Sake!5e0!3m2!1sja!2sth!4v1761132244754!5m2!1sja!2sth%22%20width%3D%22600%22%20height%3D%22450%22%20style%3D%22border%3A0%3B%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20loading%3D%22lazy%22%20referrerpolicy%3D%22no-referrer-when-downgrade%22%3E%3C%2Fiframe%3Eバンコク旧市街特集ページは↑バナーをクリック!