いつも思うのだけど、この雰囲気が好きだ。まずこういった場面で指された訳でもないのに挙手して堂々と意見を言い発表する。間違えても、的を外しても気にしない。そんな些細なことは朗らかな笑い声と共に消えてゆく。張り切っても間違えても冷笑などされない環境を羨ましく感じながら、目立たないようにしてしまう私。そしてこのタイ人女性がフランクに体重を公言することに、私はもう慣れたようでまだ慣れないでいる。他人の体重を聞くのには慣れたし、自分の体重を言うことにも抵抗はない。けれど他人の体重に言及、しかも大勢の前で他人の体重を発表するなんて人生で初めての経験だった。ちなみにこの体重を教えてくれた彼女はこの後、隣に座る女子スタッフの体重が60kgであることを発表していた。ちょっとー! と笑う60kgのスタッフ。それを聞いて笑う周りのスタッフ。もちろんバカにしたような笑いではない。なんてことのないいつもの冗談。何なら言われた彼女も毎日オフィスの体重計に乗るのが日課で、結果を自己申告している。それからみんなが声を揃えて答えた性別の数も、きっと私はもごもごしてしまう。「正しい答え」に自信がない。何より慣れていないのだ。夜の街のような特殊な場所以外で、性的マイノリティの人たちと関わってきた経験がない。彼らといると私は良くも悪くも日本人というか、下地が違うよなぁとよく思う。寛容なタイでも同性婚が認められたのは最近だし、性別は変えられない。職業選択の自由はだいぶあると思う。けれど今よりもっと前は、今のような理解はなかったとタイ人が言っていた。恥ずかしがる親もいたし、隠す人も多かったと。それがだんだん変わってきて受け入れられるようになったそうだ。多様性とは、ある集団の中に異なる特徴・特性を持つ人がともに存在すること。それはきっと「ハイ今から受け入れましょう」と号令をかければ終わりではなくて、長い時間をかけて変わっていかないといけないんだろうな。例えば今の日本で「性別はいくつありますか?」と投げかけられて、男女が声を揃えて「4つでーす!」なんて答えるだろうか。「身体的性別はふたつです!」と怒り出す人はいないだろうか。身体的性別は私もふたつしか知らないけど、周りにいる心と体の性別が違う人を否定する気にはならないし、みんなが笑顔で「4つでーす!」と言える環境っていいなぁ、と、そんなことを思った。【編集部註】本稿で述べられる4つのジェンダーとは、一般的にタイ社会で認識される「女性」「男性」「レズビアン」「ゲイ」を指し、現代ではさらに18のジェンダーに細分化できるという意見もある。なお、1800年代後半には(当時の認識における)第三の性を意味する「カトゥーイ」という単語がタイ語辞書に登場し、タイ社会におけるセクシャルマイノリティへの理解は当時から比較的寛容であったと見られる。「ゆるぬりタイランド」全話一覧ページは↑バナーをクリック!➡「ゆるぬりタイランド」次のエピソードはこちら