バケツに張った水を絵の具のついた筆でつついた時のような、そんな感じ。今まで常識だと思っていたこと、こういうものだと思い込んでいたことに、新しい色が付いてパッと広がってゆく。タイに来て感動したことの筆頭となる、周りから受け取る子どもへのやさしさ、あたたかさ。完全なる善意なのかと思っていたし、彼の話を聞いた後もほぼほぼ善意だろうと思っている。そう思ってしまう空気がタイにはある。あるったらある。乗り物などですぐに席を譲ってくれるだけではない。公共の場で子どもがぐずってしまった時の、しょうがないねという見守る空気。子どものイタズラや好奇心を肯定する空気。何度聞いたかわからない、私の謝罪に対する「マイペンライ」。それから何より、そこに子どもがいるというだけで緩む目元や口元が作り出す、あたたかい空気がなんとも有難く、ほっとする。とはいえ、彼からもたらされた新しい情報はなんとも興味深かった。私は日本の同調圧力が苦手だったけれど、他の国にだってあると聞く。いわゆる国民性というものは、そういった無言の圧力とも関わりがあるのではと思う。良いとされる行い、マナー。秩序の概念。お国違えばそれぞれの同調圧力。タイのそれは、自分より弱い人は無条件ですぐさま助けるべき! というものなのかな。そういえば、日本育ちの私から見るととんでもなく自由なようで、意外と他人の目を気にしたりもするよねぇ。彼のように親切の初動が遅れてしまうことにプレッシャーを感じるタイ人もわりといたりするのかしら。なんて、お得意の妄想が捗って楽しい。そういえば彼は、「日本の電車では妊婦の時に寝たふりをされたことがある、日本人は余裕がなくてみんな疲れているんだろう」と不満を漏らした私に「日本人は誰かがやったらやるんですよ」と言った。「最初に誰かやってくれたら、それに続いてやるんです」流石というか、長年住んでいただけあって解像度が高かった。思わず感心してしまった。自分とは違う文化で、背景で育った人と話すのはおもしろいなとつくづく思う。新しい発見、想像したことのない視点、考え方。外から見た自分の国のこと。これからも色んな人と話せたらいいな。パッと広がる世界に気づけたらいいな。「ゆるぬりタイランド」全話一覧ページは↑バナーをクリック!➡「ゆるぬりタイランド」次のエピソードはこちら