ピックアップトラックから降りて突っ立っていたその人の全身から「やり過ごしたい」というオーラが漂っていて、困ったことに彼を一目見て私も面倒くさくなってしまった。「バイクが行ったから(大丈夫だと思った)」バイクが、バイクがと何度も言う。「だから何?」である。「保険入ってる?」と聞くことすら面倒になってしまった。会話する気力を根こそぎ奪うおじさん、ある意味逸材。今日は打合せがあるんだよなぁ。保険屋を呼んだらすぐに来てくれるのかな。昔上司に付き添って警察に行ったけど、届け出も必要なんだろうか。会社に連絡してそれから……うわーめんどくさい!Uターンレーンから出てくる車はUターンをすると思い込んでいた私にも落ち度があったのではとすら思った。まさかそこから一直線に大通りを突っ切って横道に入ろうとする車がいるなんて思いもしなかった。私の想像力の欠如が原因では? イヤせめて車が来ないか確認するでしょ! などと脳内でひとりボケ突っ込みをしてみたけどむなしいだけだった。マイペンライだろ? な? と空気で語りかけてくるおじさんに向かってめちゃくちゃでかいため息をお見舞いして、ちょっとへこんでホイールのカバーが外れた車で仕事に向かった。車通勤を初めて2ヵ月。信号のほとんど無い通勤路のスピード感にはまだ慣れないでいる。「なかなか進まないなぁ」と思ってメーターを見ると80km出ているし、90kmでも煽られる。車間距離を保ってゆっくりめに走っていると横から入られて結局車間距離が無くなる。「遅く走るのは危ない」との教えの下、流れに乗って走ろうとすると自然とアクセルを踏み込むし、追い越しもかける。カオスなバンコクでの運転とはまた違うスリル。信号が青に変わる瞬間は、脳内で「ティッ ティッ ティッ ティーン!」という音が鳴り響くスタートダッシュ。予備動作のない車線変更。目を見張る斬新なコース取り。堂々とセンターラインを越えて向かってくる対向バイク、時々車。時折聞こえるサーキットの音。カーブの多い追い越し禁止の片側一車線でのごぼう抜きも見慣れ、「某レーシングゲームかよ!」と突っ込みながら運転する日々。けれどもちろんやさしいドライバーもいるし、自分も許してもらったりして、やっぱり嫌いになれないタイランド。先日、日本のアマゾンで交通安全のお守りを探してしまい、「絶対意味ないでしょ」とまたセルフ突っ込みをしました。プラクルアン(仏像を象ったタイのお守り)の方がいいかなぁ。「ゆるぬりタイランド」全話一覧ページは↑バナーをクリック!➡「ゆるぬりタイランド」次のエピソードはこちら