ノンカイのホームステイ先の、大家さんの弟トゥさん。カメムシを見つけてからの彼の動きたるや。跳躍力もさることながら動体視力も相当のものだろう。飛び回る虫を素手で、しかも野外で捕まえるという作業にはかなりの運動神経とハングリー精神が必要なはずだ。それほどまでに美味しいのだろうか。「臭い」という単語を聞いた瞬間「絶対に口に入れることはできない」と思ったので永遠の謎だ。昨今日本で話題の昆虫食。あまり良くない意味で話題になっているけれど、タイのこの環境のせいかそこまで批判するほどのことかなと思ってしまう。もちろん食べることに関してのみで、日本の農業や酪農を押しのけて推奨するのであればそれは私も批判する。虫は「抗生剤を打たれている鶏や豚より安全で栄養豊富な食べ物」と聞いてなるほどと感心したけれど、「餌場で農薬を使っていたらそうでもないけどね」というオチもついていた。本当に安全な食べ物って希少なんだろうなぁとよく思う。皆さんは虫を食べたことがあるだろうか。私は好奇心旺盛な方なので見た目がちょっとアレなタガメ以外はけっこう挑戦した。コオロギやヤゴもわりと好きだけど、バッタが一番好みだった。サックサク故にたまに口に足が刺さるものの、カラッとしていて川エビの唐揚げ風味なのが良い。タイ人イチオシの蚕の幼虫は、噛んだ瞬間口の中に広がる肉汁を私の心が拒絶して味わえなかった。「卵と一緒に炒ったら全然違うから! 美味しいから!」と言われて幼虫スクランブルエッグにも挑戦させられたけど感想は同じだった。ちょっと期待してしまうのが悔しい。ノンカイで住んでいたアパートでは、大家さんとその友人たちが塀にはしごをかけ、バケツを括り付けた棒をマンゴーの木に突っ込んでゆすっているのを見かけた。バケツの中にはたくさんの蟻の卵と、ついでに捕れた大きな赤い蟻。蟻の卵を食べるのは知っていたけど捕り方は知らなかったので新鮮な光景だった。生まれて初めて食べた蟻の卵は、一緒に皿に盛られてしまった動き回る蟻が気になってあまり味を覚えていない。タイの人たちは気にせず蟻ごと食べていた。飛び回る虫を手で捕まえる人も蟻の卵の採取方法も屋台に並ぶ虫たちも、タイに移住しなければきっと見るはずのなかった景色と、おそらく一生味わうことのなかったものたち。未知の世界は楽しい。日々の小さな冒険や思いがけない出会いは、きっと一生ものの思い出になるんだろうな。「ゆるぬりタイランド」全話一覧ページは↑バナーをクリック!➡「ゆるぬりタイランド」次のエピソードはこちら