あれはちょうど一年ほど前、今の家に引っ越しをして間もなかった頃。夜中に大雨が降る日が多く、とはいえ「雨季だなぁ」と思うだけで特段変わったことはなかった。雨が続き、晴れた休日の朝。たしか何かを探していた私は、普段使っていないゲストルームの部屋のドアを開けた。瞬間、目に飛び込んでくる水浸しの床。声にならない悲鳴を上げた。急いで確認したけど窓は閉まっている。天井や壁に雨漏りしたような痕もなく、ついでに言うと前日の夜は雨ではなかった。なんで!? どうやって!? と混乱しながら急いで大家さんに電話をすると、すぐに大量のバスタオルを持ったメバーンと、チャーン(技術者)を連れて来てくれた。部屋を使っておらず窓もドアも締めっぱなしだったために発見が遅れてしまったことが申し訳なかったけれど、如何せん何故なのか検討もつかない。雨漏りではなさそうだけど、まさか壁と床の境目から水が入ってくるなんてことはないよね…? そんなことになったら前の住人だって大家さんに言っているはずだ。そうこうしているうちにチャーンが「外の木じゃないか」と言い出した。窓の目の前にあるマンゴーの木の葉から窓の隙間を伝って雨が入ってきたんだろう、と。正直「そんなことある?」と思ってしまった。たしかに伸びた枝が窓に葉っぱを押しつけ、貼り付けてはいる。だけど、窓に隙間があったとしてそこに葉っぱがピッタリマッチし床が水浸しになるほど雨が入るだろうか。それとも私が想像できないだけで、よくある雨の入り方のような事例があるのだろうか。水に浸っているベッドの足とクローゼットが一部ボロボロになってしまっていて、なんだか心苦しかった。あれ以来大雨が降るたびに心配になってゲストルームを覗いているけど、水浸しになることはない。ということはチャーンの推測が当たっていたということなのかな。すぐに木のことを言い出したのは、やはり実例を知っていたからなんだろうか。それにしても、である。伸びた枝を切るとかではなく木を切り倒す行動力というか決断力というか、枝を切ってもまだすぐ伸びてしまうからということなんだろうし、家のダメージを考えたら正しいとは思うのだけど。水が入ってくるかの検証をするでもなく「これのせいじゃないか?」からの即決・即行動だったのがとてもタイ人らしく印象的で、やはり根っこが違うなと感じた。大雨が降る度に私は、切り倒されたマンゴーの木を思い出す。「ゆるぬりタイランド」全話一覧ページは↑バナーをクリック!➡「ゆるぬりタイランド」次のエピソードはこちら