短いながらも専業主婦を経験した上での今の生活。メバーンさんが来て、心の余裕が生まれた私の感動は経験者であれば想像に難くないと思う。「これ家事育児をしないお父さんじゃん」と思った。仕事は大変だ。けれど小さな子どもがいるのに仕事だけしていればいいというのはラクだ。私はこうして会社員の傍ら創作活動もしているけど、24時間働いている訳でもなければ目を離したら死んでしまう生き物を見ながら働いている訳でもない。ほぼ無いと言っていい自分の時間。荒れ狂う乳幼児をなだめながらする料理や洗濯。疲れた体に追い打ちをかける、寝ない子の寝かしつけ。専業主婦である私が全てやるのが当たり前で、毎日必死にこなしても労われることはなかった。気が向くと「手伝って」くれる夫は、お礼を忘れると不機嫌になった。我が子の可愛さだけが癒しだった。仕事は、働いた分評価され給与という目に見える形で受け取れる。自分で稼いだお金を手にすることが自尊心に繋がるかどうかは人によるのだろうけど、私は大いに安心するタイプだ。そして今やお父さん改め雇用主の私。家事と育児を支えてくれるメバーンさんに感謝を伝え、お給料とボーナスを、時間外労働に対価を支払う。自由に夜遊びにも行ける。休日にひとり一日中カフェで作業することもある。協力してもらうのに詫びる必要はなく、そこには彼女に対する「ありがとう」しかない。一番の恩恵は、子どもに対して自分の都合で怒らなくなったことだ。後回しにした家事はそのうちやってもらえる。休日は子どもたちと一緒にしたりする。手抜きをしてもやらなくても私を責める人はおらず、子どもたちとごろごろして抱っこしてふざけて踊って、そんな毎日。心身がラクであること、自分だけの時間があること、「こうあるべき」を押し付けられない日々は心の余裕に繋がる。できるラクをして得はあっても損はない、と思う。私が何より重視するのは、自分がちゃんと笑えて、穏やかでいられること。それが子どもたちにも伝わると信じているから。そしてふと、いまさら母を想う。母が家のことを全てやることに何の疑問も持たず、形ばかりの感謝しか伝えなかった。想像力が足りず、実際に経験するまで気づけなかった。家族がいるのにほぼ全ての家事をひとりで背負うのは、ひとり暮らしのそれと全然違う。もっと手伝えばよかった。お母さん少しはラクしてよって言えばよかった。きっと母はいいのよって笑っただろうけど……それでも、言えばよかった。「ゆるぬりタイランド」全話一覧ページは↑バナーをクリック!➡「ゆるぬりタイランド」次のエピソードはこちら