はじめて聞いた時は「なんだか日本の民謡みたいだな」と思った。歌唱力があるのかないのか、きっと上手いのであろう抑揚のある歌声。独特のリズムを刻む楽器の音に聞き覚えはないのに、何故か感じる懐かしさ。かっこいい! とは思わなかったというのが正直な感想。私が住んでいたノンカイはまさにモーラム発祥のイサーン(東北)地方だったのもあり本当によく耳にした。結婚式など催し物があるとなれば早朝6時から爆音で流れ出し、深夜まで聞こえてくる音楽。小さな子どもを育てている身としては「せめて夜はもう少しボリュームを……」と言いたくなる程だったけれど、周りを見渡してもそんな苦情は無さそうであった。それでもやはり軽快な音楽が流れてくると覗きたくなるし、お祭りと聞けば参加していたので、私はその楽し気な雰囲気にどんどん惹かれていった。イベントのステージ上で派手な衣装に身を包み踊るお姉さんたち。その下で楽しそうに踊る一般の人たち。ピックアップトラックに積んだ大きなスピーカーの傍らに仲間と集まってお酒を飲み、歌い、踊る人たち。音楽がなくても、ゴミ箱を太鼓にアカペラで歌う楽しそうな酔っ払い。そんな時の音楽はモーラムが多かった。特別な日でもそうでない日でも、性別も年齢も関係なく楽しそうな人たちを見ていると思わず顔がほころぶ。特に自分の母や祖母ぐらいの年齢の人が楽しそうに踊っているのを見ると自然といいなぁ、と思った。私は母や祖母がそんな風にしている姿を見たことがない。祖母は趣味でフォークダンスを習っていたけれど家で踊ることはなかったし、ふたりとも年に一度の盆踊りですら「恥ずかしい」と言って端に座って見ているだけだった。踊りたくないのに踊れとはもちろん思わないけど、もし「恥ずかしい」と言う人が周りにいない環境だったら、それでも踊らなかっただろうか。そもそも音楽で勝手に体が動き出す、といったような感覚が日本人にはあまり無いのだろうか。子どもたちとダンスバトルして笑い転げながら、時々そんなことを考える日本育ちの元パリピ、42歳二児の母。自分軸で楽しむって大事だと思う。人からどう見られるか、じゃなくて。他の人を窺うのではなくて。楽しんでる誰かを「いい歳して」みたいに馬鹿にするなんて論外。たまに無性に聞きたくなる、あの独特なノリの音楽の素晴らしさはもちろんのこと、みんな自然で自由な雰囲気が最高なのよね、モーラムとタイランド。「ゆるぬりタイランド」全話一覧ページは↑バナーをクリック!➡「ゆるぬりタイランド」次のエピソードはこちら