何故そんな話題になったのか、ノンカイのホームステイ先のご主人が、たしかタイ人奥様の愚痴を言っていたのだった気がする。「タイ人は本当に謝らないんですよ」と。全くピンと来なくて「そうなんですか?」と聞いた、タイに来たばかりの私にご主人は彼の持論のようなものを教えてくれた。タイ語で「ごめんなさい」は「コートー(ขอโทษ)」と言うでしょう? コー(ขอ) は「乞う」という意味ですね。ではトー( โทษ)という言葉の意味は知っていますか? これは「罪、罰」といった意味です。「罪を責める」という意味もあります。つまり「コートー(ขอโทษ)」を直訳すると、「どうぞ私に刑罰を与えてください」という意味になる。罪を認め罰を下してくれなんて言ったら、時と場合によっては死ぬ可能性もある訳です。だからそう簡単には謝る訳にはいかないんですよ、きっと。笑いながら言っていたので冗談だったのかもしれないけど、私はなるほどと思った。たしかにそれならそう簡単に口にする訳にはいかない。対して日本育ちの、しかも接客業を生業としていた私。謝罪など呼吸のようなものである。すぐに謝る。とりあえず謝る。「大変申し訳ございませんでしたお客様」と、大変申し訳なさそうな顔に無の心で唱えられる。自分に非があろうとなかろうと謝らなければ場が収まらない場面は幾度となくあり、そうすることが一番安全だった。時が経ち、今は私も知っている。タイ人は謝らない。いやもちろん個人差はあるし絶対ではない。ごめんごめんみたいな軽いコートーは言う人も多い。けれど責任問題になりそうだったり、補償問題になりそうだったりすればするほど言わない気がするし、言い訳の方が早い。罪を認めたら自分に不利益が発生するかもしれない、そんな風に考えているのかなと、ご主人の話を思い出す。「悪いと思っていないなら謝らない方がまし」ぐうの音も出なかったし、自分には無いと思っていた「私はこうしているのにあなたはなぜしないのか」みたいな感情を見透かされたようで恥ずかしくもあった。私と彼らは育った環境も考え方も違うのだから違って当たり前だ。謝りたいと思う頻度やタイミングが違うだけなんだろう。どちらが正解なんて無い、異文化に触れる醍醐味。頭から「これが常識」を排除して、フラットに物事を見たり考えたりする。そうしてなるほど! とかこうなのかな?ってなるその瞬間が、私はすごく好き。「ゆるぬりタイランド」全話一覧ページは↑バナーをクリック!➡「ゆるぬりタイランド」次のエピソードはこちら