バンコク旧市街、タラートノーイ地区。車の入れない細い路地(ソイ・ワーニット2)に静かに時を止めたような場所がある。かつてラーマ3世期(約200年前)に豪商の邸宅「バーン・ラチャボリラック(บ้านรัชต์บริรักษ์)」として建てられ、近年ではアートフェスティバルの展示会場として注目されたり、人気カフェ「パティナ(Patina)」としても人気を博して来た古建築。現在は建物の番地を冠したコミュニティ&カフェスペース「965bkk」として、新たな息吹を宿している。タラートノーイの細い路地に入り、ソイ・ワーニット2沿いに建つ古建築。ラーマ3世期に豪商の邸宅として建てられ、現在はカフェやコンセプトストアとして活用されている。ちなみに上写真のエントランス付近がコンセプトストアのスペースで、この部分だけ火~日曜日まで営業している(奥のカフェは週末のみ営業)「見過ごさず、大切にケアする」名前に込められた祈りこの場所はもうひとつ、「バーン・リウレー(Baan Liew Lae / บ้านเหลียวแล)」という名で呼ばれることもある。 約40年もの間、固く扉を閉ざしていたこの邸宅を2017年に再生させる際、「Real Rare(極めて希少な遺産)」という響きと、タイ語の「リウレー(เหลียวแล/見過ごさず、目を向けてケアする)」という言葉を重ね、この名が付けられた。中華様式の円形門「月亮門」の背後には、奥のプライベートエリアに設けられた後庭が広がっている風化した壁と淡いグリーンの木製ルーバー扉、頭上に施された透かし彫りの欄間。200年の歳月が染み込んだ二階の廊下に、路地裏の静かな風が吹き抜ける一歩足を踏み入れると、中華様式の伝統的な「月亮門(円形の門)」や、時を経てモルタルが剥がれ落ちたレンガ壁が私たちを迎え入れてくれる。二階に上がれば美しい木彫りの欄間の回廊もある。 ピカピカの新品へ戻すのではなく、200年の風化や傷跡そのものを「パティナ(経年変化の美)」として慈しみ、残す――。そんなオーナーたちの深い敬意が、まるで空間全体を満たしているかのよう。なぜ「週末限定・夕方まで」なのか? 建物に合わせた旅の作法以前のカフェ時代、ここは連日あふれんばかりの来訪客で賑わう大人気スポットだった。しかし、多くの人々が訪れ、夜遅くまで空調や重機が稼働することは、繊細な200年前の木造トラスや煉瓦壁にとって大きな負担となった。一歩踏みしめるごとに歴史の重みが伝わる、重厚なチーク材の階段現在の「965bkk」が、金・土・日曜日を中心とした限定オープン・夕方までの営業というスタイルをとっているのには、平日に建物を休ませ、丁寧な点検と修繕を行うという目的もあるようだ。人間側の都合で建物を使い倒すのではなく、建物の寿命に合わせて私たちが寄り添う。 訪れる私たちも、その想いを少しだけ胸に留めておきたいと思わされる。だから以下のような点に配慮をしながらの探訪を心掛けたい。歩くときは、静かにゆっくりと(古い木床や階段のきしみを味わうように)壁や脆い漆喰にはむやみに寄りかからない混雑時は長居をしすぎず、静寂を分け合う写真撮影時に三脚等を使用せず、床を傷付けないそんな少しの心遣いがこの貴重な建築を未来へ残す力になるかもしれない。光と風が抜ける中庭(コートヤード)で、静かなティータイムを中国南部(潮州や福建)から移住してきた商人たちは、四合院をベースにしつつ、気候や敷地に合わせて「一正面+二両翼+一壁」の三合院スタイルなども柔軟に取り入れてきた。この建物の場合には、中庭(コートヤード)を取り巻く四面の内、三面に部屋があり、残る一面は熱帯植物が這う壁となっている。 ここは単なる庭ではなく、バンコクの熱気を上空へと逃がし、家中に風を行き渡らせるための知恵の結晶とも言える。見上げると、古い壁にシダやポトスが生き生きと茂り、切り取られた青空から柔らかな光が降り注ぐ。二階の回廊から中庭を見下ろす。風化した壁面を這う豊かな熱帯植物一階から見上げると、切り取られた四角い空が姿を現す。中庭が換気と採光の役割を果たしていることがよく分かる建築探訪の合間には丁寧に作られたシグネチャードリンクや軽食をどうぞ。ノスタルジックなモザイクタイルのテーブルに運ばれてくるメニューは、タイのストリートフードやローカル素材にモダンアレンジを加えたもの。旧市街散策で火照った体を、心地よい風とともに優しく冷ましてくれる。グァバを大胆にあしらった清涼感ある烏龍茶(Oolong Guava / 170バーツ)と、サクサク&モッチリと香ばしく焼き上げられたロティ(Beef Satay & Roti / 180バーツ)。ロティには、濃厚ピーナッツソースとピリ辛パイナップルレリッシュで味付けされた牛串が一本そのまま載っているタラートノーイの路地裏散策で火照った体を癒すには丁度いい軽食。二階L字回廊のの欄干脇の席がお気に入り一階のコンセプトストアから中庭、奥の間、後庭、そして二階のL字型回廊へまず、一階エントランスにはバンコクの若手クリエイターによるアパレルやグラフィック雑貨が並ぶコンセプトストアが広がっている。街の伝統を受け継ぎながら、現代のカルチャーを軽やかに発信するタラートノーイの「今」を感じられるスペースだ。そして、その奥に前述の中庭があり、さらにその奥に進むとレトロなペンダントライトとヴィンテージ家具が配された部屋がある。まるで昔の裕福な華人商人の私邸にお邪魔したような、落ち着いたプライベート空間だ。温かなペンダントライトが灯る一階奥の小部屋。ヴィンテージの木製アームチェアに身を委ねてリラックス一階の奥の間から見た中庭。左手のロングテーブルが置かれた部屋は二階のL字回廊の下にできたスペースを上手く活用したもの。中庭から吹き込む風が心地よい奥の間から月亮門をくぐって外へ出ると、そこは広々とした後庭。そしてその奥にもう一棟の建築が姿を現す。こちらは一般客が立ち入りできない棟で、従業員のみが出入りしていた。後庭から月亮門を捉えたショット。とても写真映えするスポットだ月亮門と後庭を一緒に収めたショット。丸い門の向こうから風が通り抜け、色鮮やかな屋外チェアや鉢植え盆栽が心地よく調和する後庭の一番奥にはもう一つの棟が静かに佇む。ミントグリーンの木製外階段と、二階へと続く手すり付きバルコニー。風化した高壁に絡むツタやプルメリアの緑が後庭に柔らかな陰影を落とす本棟の方へ戻り、チーク材の階段を上がって二階へ。まず下写真でご覧いただける通りのL字回廊があり、一方の壁には開かずの間が(イベント時に開放されることもある)、そしてもう一方には回廊の一部を利用したバルコニーのようなスペースが中庭に面して開かれている。どこをどう切り取っても絵になる建築だ。風が通り抜ける二階のL字回廊。古い建物の温もりと緑に包まれる特別な時間L字回廊のもう一方は中庭に面したバルコニーのようなお部屋。ここの居心地がとても良いおわりに:歴史の「目撃者」として空間を愛でる歴史ある建物をリノベーションしたカフェはバンコク中に増えているけれど、965bkkほど建物の声に耳を傾け、大切に保護されながら開かれている場所は多くない。ただ映える写真を撮るためだけに訪れるのではなく、200年の歳月とそれを守り継ぐ人々の想いにそっとリスペクトを払ってみる。 そんな視点を持つだけで、ここで過ごす一杯のお茶は旅のかけがえのない思い出になるはず。965bkk965 Soi Wanit 2, Talat Noi, Samphanthawong, Bangkok 10100最寄り駅は、地下鉄フアランポーン(Hua Lamphong)駅OPEN: 10:00-18:00(Fri-Sun) Closed on Mon-Thu※一階コンセプトストアの営業日は(Tue-Sun)https://www.instagram.com/965bkk/https://www.facebook.com/965bkk/%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.google.com%2Fmaps%2Fembed%3Fpb%3D!1m18!1m12!1m3!1d242.23501095036045!2d100.51308659882449!3d13.732964486601318!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i1024!2i768!4f13.1!3m3!1m2!1s0x30e299cc7a7827cf%253A0xb29d61933a64398c!2s965bkk!5e0!3m2!1sja!2sjp!4v1789408852245!5m2!1sja!2sjp%22%20width%3D%22600%22%20height%3D%22450%22%20style%3D%22border%3A0%3B%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20loading%3D%22lazy%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%3E%3C%2Fiframe%3Eバンコク旧市街特集ページは↑バナーをクリック!