元は20世紀初頭にできた銀行の建物。くさび形の堅牢な外観や、吹き抜け・トップライトの古典的設えに、ここが銀行だった頃の面影が今も残る。それが後に病院(診療所)として利用されるようになったかと思えば、ベトナム戦争の時代を経て、清廉な金融の殿堂はやがて売春宿に――。さらに2010年代にはまるで廃墟のようになり果てたこの洋館に、新たな命が吹き込まれることになるのは2019年。退廃美という妖艶な化粧を纏ったかつての名建築に目を付けたのは、ある一人の女性デザイナーだった。「ザ・ムスタング・ブルー(The Mustang Blu)」。今やカフェ、レストラン、ブティックホテルという3つの顔を持ち、バンコク旧市街で魔性の輝きを放つ場所。カメレオンのようにいくつもの表情を見せるこのいわくつきの建築に美を見出すか、それとも忌まわしさを感じるか。そこは意見の分かれるところだ。ただこの場所が辿ってきた数奇な運命のすべてを受け入れ、今ある姿をそのまま愛でる。そうすることで、バンコク旧市街との距離感が一層深まることもある。※この記事の一部にはアフィリエイト広告が含まれています。バンコク旧市街、マイトリーチット通りの白い洋館「The Mustang Blu」。この建築が辿ってきた数奇な運命が外観に独特のオーラを纏わせる【Trip.comで The Mustang Blu ホテルを予約する】※外部アフィリエイトリンクです。皆さんからのご支援が今後の現地取材の励みになります。今後もバンコクのリアルな情報を発信し続けますので、よろしければご活用ください。銀行、病院、娼館、そして廃墟。数奇な運命に翻弄された建築だけが身に纏う、特別なオーラ活気あるバンコク旧市街・中華街(ヤワラート)の東端、マイトリーチット通りの辻に、時が止まったかのような佇まいの洋館が現れる。かつて銀行や病院として、そして時には娼館として、この通りの変遷を静かに見守ってきた築100年超のコロニアル建築。20世紀初頭、フアランポーンからヤワラート(中華街)一帯は海外との貿易、そしてタイにおける華僑経済活動の中心地だった。その金融取引や貿易決済を担う拠点の一つとして、中国銀行(Bank of China)がこの地に誕生する。今や外壁にはすっかりひび割れが目立つものの、道路の二股に沿って両側から出入りできる回遊性の高い設計に、銀行としての往年の姿が偲ばれる。するともう、長い年月が刻み込んできたパティナの一つ一つでさえ、唯一無二のチャームポイントに見えて来てしまうのだ。マイトリーチット通りから捉えた「The Mustang Blu」の外観。通り沿いの真正面にも扉が見えるが、建物の左右両翼にもクラシカルな扉があり、回遊性の高い建物であったことが偲ばれる建物を斜めから見れば、3階にあるラウンドバルコニーがひときわチャーミング。この美しさゆえ時代に翻弄されて来たかと思うと、白い壁に刻まれたひび割れの一つ一つがもはや愛おしいこの数奇な歴史をモデルのmaliに言い含めたうえ、時代に翻弄された絶世の美建築に思いを馳せた表情でエントランスに立ってもらう。そんなプロンプトから生まれたワンショット。この表情で正解だったのだろうか…まぁこんなもんだろう映画セットに迷い込んだようなコロニアル建築の美一歩店内へ足を踏み入れれば、吹き抜けの天窓からは柔らかな自然光が降り注ぎ、中央には本が積み上げられた重厚な鋳鉄のらせん階段が鎮座している。ヤシの木を思わせるアール・デコ調の柱や剥がれかけた塗装の天井、アンティークの緑色バンクランプなど、どこを切り取っても完成されたシネマティックな美意識に圧倒される。しかし、それより何より驚きは本物のキリンのはく製だ。来訪者のほとんどが模型か何かだと思っているようだが、これは他の場所に飾られていたキリンのはく製を二次利用したものなのだとか。当館オーナー兼デザイナーのAnanda(ジョイ)氏はデザイナーとしての顔の他、筋金入りのアンティーク・はく製コレクターとしても知られており、自身が手がける他のホテル(プラカノンの「The Mustang Nero」など)でも本物の野生動物のはく製を空間デザインの核として多数展示している。ただし、これらは狩猟により殺傷して入手したはく製ではなく、海外の動物園や保護区などで自然死(老衰や病死)した個体を、正規のはく製師が加工したヴィンテージのコレクションなのだとか。この気鋭の女性デザイナーのこだわりが随所にちりばめられているからこそ、ここが唯一無二の空間として多くの人々に愛でられているのだ。エントランスの扉を開ければご覧の景色が視界に飛び込んでくる。100年前の新古典主義建築の特徴である、天窓へと続く中央のらせん階段と、その周囲を彩るアンティーク家具。そして圧倒的な存在感を放つキリンのはく製。手前には積み上げられた古い本とチェンバロが配置され、時が止まったようなシネマティックな退廃美が空間全体を支配しているせっかくなのでヤシの木越しに見るキリンのはく製もどうぞ。「これって本物のキリンのはく製なんやで…」ここに来ると決まって同行者にそう教えてあげるのだが、いつもだいたい僕がまた適当な嘘を吐いているのだと思われている。たぶんふだんの行いが悪いせいだろう天井に向かってラッパ状(ヤシの木状)に優雅に広がる、アール・デコ調のフルーティング(縦溝彫り)柱頭。かつて銀行として建てられた堅牢な構造と、幾重にも塗り重ねられた塗装が剥がれ落ちた天井のテクスチャー。100年を超える時間の堆積を物語るかのような存在感100年の時を刻む旧銀行の朽ちかけた壁と、無骨なアイアンのらせん階段。積み上げられた古書と緑のランプが灯る、迷宮のようなバンコク「The Mustang Blu」のロビーにて。チャイナドレスでこのシネマティックな退廃美に溺れてもらおう「The Mustang Blu」の象徴、中央の吹き抜け。100年の歴史を持つ建物特有の、経年変化による風合いが残る天井と、そこへと続くアンティークな鋳鉄製のらせん階段。最上部のトップライト(天窓)からは自然光が差し込み、時が止まったようなシネマティックな空間を作り出すかつて銀行や病院、そして風俗店だった歴史的建造物を改装したこの場所で、朽ちかけた壁やアンティーク家具が醸し出す退廃美に酔いしれよう。窓の外に見える落書きやバイクと、店内のクラシカルなチャイナドレス姿のコントラストが、旧市街の混沌とした魅力を映し出す空間を彩る、造形美際立つアートスイーツこれだけの空間演出を目にしてきた後だけに、フードメニューがふつうだったらさぞや白けてしまうことだろう。しかし、心配はご無用。このこだわりを持つ人物が手がけているだけあって、きちんとそれに見合ったものを提供してもらえる。今回は特にスイーツ系カフェメニューに絞ってご案内することとしたい。アンティークの木製テーブルに温かなランプの灯りが落ちる席で過ごすティータイムは、慌ただしいバンコクの日常を忘れさせてくれる贅沢なひとときとなる。温かなテーブルランプの光が照らすアンティークな円卓。らせん階段と古書の山を背に、細やかに仕立てられたスイーツで寛ぐティータイム。時が止まったかのようなノスタルジックな空気感アンティーク調のブルー&ホワイトのプレートに盛り付けられた手前の一皿は「LEMON BLU/レモン&ブルーベリーケーキ レモングレーズ」(350バーツ)。淡いミントブルーのアイシングがとろりと滴り、スライスレモンやエディブルフラワー、フレッシュなブルーベリーが華やかにトッピングされている。しっとりとした生地と柑橘の酸味が心地よい仕上がり。写真右奥のステム付きグラスで端正に仕立てられたデザートは「AL CAPONE/エスプレッソ パンナコッタ」(250バーツ)。スポイト付きのボトルに入った琥珀色のエスプレッソをお好みで垂らしながらいただく、実験室のような遊び心溢れる演出も魅力的なパンナコッタパンナコッタの表面をエスプレッソで満たすとこのようになる訪問時のポイント1フード&1ドリンク:入店時に必ず1人につき1フード&1ドリンクをオーダーするようお願いされる。今回のオーダーの場合、「LEMON BLU」を1フード、「AL CAPONE」を1ドリンクとカウントしてもらった。このような制約がないと写真を撮るだけで帰ってしまう客が後を絶たないのだとか。混雑時間帯:午後のカフェタイムは写真撮影を楽しむ来客で賑わうため、落ち着いて空間の陰影や建築美を味わいたいならオープン直後の午前中が狙い目。ドレスコード・装い:アンティークでクラシカルな内装には、レトロなワンピースやオリエンタルな装いが抜群に馴染む。そこまでかしこまる必要はないが、Tシャツ・短パン・サンダル履きで行くとちょっと浮くので最低限のマナーは守ろう。ブティックホテルとしてもおススメ。100年の歴史が宿るコロニアル建築と客室デザインブティックホテルとしての魅力も忘れてはならないのが、このザ・ムスタング・ブルー。100年の歴史を持つコロニアル建築を活かして建物全体の統一感を保ちながら、部屋ごとに異なる個性的なヴィンテージ装飾が施されている。客室は30㎡と60㎡の2タイプ。窓際に大胆に配置された自立型バスタブがお部屋のインテリアと調和して、バンコクで過ごす一夜を忘れられないものにしてくれるはず。【Trip.comで The Mustang Blu ホテルを予約する】※外部アフィリエイトリンクです。皆さんからのご支援が今後の現地取材の励みになります。今後もバンコクのリアルな情報を発信し続けますので、よろしければご活用ください。ザ・ムスタング・ブルー(The Mustang Blu)721 Maitri Chit Rd, Pom Prap, Pom Prap Sattru Phai, Bangkok 10100最寄り駅は、地下鉄フアランポーン(Hua Lamphong)駅OPEN: 11:00-21:30 Dailyhttps://www.facebook.com/themustangbluhttps://www.instagram.com/themustangblubangkok%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.google.com%2Fmaps%2Fembed%3Fpb%3D!1m18!1m12!1m3!1d1937.8274894738631!2d100.51452887300968!3d13.739326517672351!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i1024!2i768!4f13.1!3m3!1m2!1s0x30e29975780e8467%253A0x26e71ed4bad1c54a!2z44Og44K544K_44Oz44KwIOODluODq-ODvA!5e0!3m2!1sja!2sjp!4v1788874205014!5m2!1sja!2sjp%22%20width%3D%22600%22%20height%3D%22450%22%20style%3D%22border%3A0%3B%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20loading%3D%22lazy%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%3E%3C%2Fiframe%3Eバンコク旧市街特集ページは↑バナーをクリック!